昇降設備点検とは
建築基準法により定められた検査で、車にも車検があるように、エレベーター等にも建築基準法第12条3項により「定期検査」を行い、その検査結果を特定行政庁に報告することが義務付けられています。これは「エレベーター等の安全確保にとって重要な安全装置の試験や、機器の劣化を総合的な面で判定を行う検査」となります。備え付けているすべての建物が対象となります。
点検種類
- 「定期検査報告(建築基準法第12条)」
性能検査を受けるエレベーターとホームエレベーターを除くすべてのエレベーター等が対象の法的義務 - 「性能検査・定期自主検査(労働安全衛生法)」
積載量1トン以上のエレベーターが対象の法的義務 - 「保守点検(建築基準法第8条)」
すべてのエレベーター等が対象の努力義務
定期検査報告
- 「法令」
建築基準法第12条の3項 - 「内容」
エレベーター・ダムウェーター・エスカレーターが国土交通大臣の定める基準に適合しているかどうかを調べる - 「作業者」
一級建築士または二級建築士または昇降機等検査員(旧:昇降機検査資格者) - 「時期」
おおむね6ヶ月~1年ごと - 「記録の保管期間」
3年以上
保守点検
- 「法令」
建築基準法第8条 - 「内容」
エレベーター・ダムウェーター・エスカレーターに異常がないかどうかを調べる(安全保持・性能維持) - 「作業者」
専門技術者 - 「時期」
使用頻度に応じて - 「記録の保管期間」
3年以上
■以下、点検の種類や関わりのあるキーワードに沿ってご説明します。
FM(フルメンテナンス)契約
保守点検を行う際は大きく分けて2種類の契約で点検を行う事になります。
フルメンテナンス契約は、月額の費用に部品交換や修理の費用が含まれている契約です。点検の結果、部品交換や修理を実施した場合でも、別途その費用が請求されることはありません。フルメンテナンス契約の費用相場は月額4万円程度です。もちろん、メンテナンスの依頼先やエレベーターの経過年数、仕様及びメンテナンス状態によっても金額は変動しますが、年間で50万円弱程度かかると考えておくとよいでしょう。
メリットとしては、部品交換や修理において、毎回オーナー様が状況を判断する必要がなく、手間を省けるということが挙げられます。また、毎回の点検費用が一定になるため、予算を把握しやすく経理上の処理が簡易になるという点もポイントです。一方で、総支払額でみるとPOG契約より割高になることが多いという点に注意しなければなりません。
お勧めのケース:商業施設等の使用頻度が多い建物/戸数が多いマンション
POG契約
前述のフルメンテナンス契約とは違い毎月の点検費用を抑え、修理や部品交換が発生した時に別途で費用を払う必要がある契約です。フルメンテナンス契約と比べると費用相場は月額25,000円程で、年額30万円です。フルメンテナンスとは約20万円の差がありますが、月々の費用を安くしたい・自身で業者を探し費用を安く済ませることも可能なので、点検費用を安く抑えたい方には向いている契約です。
しかし、交換等の見積もり頻度が多い場合には費用が高くなってしまう可能性もありますので、注意が必要になります。
お勧めのケース:事務所・オフィスが中心のビル/築浅のマンション
エレベーターリニューアル
保守点検を行っていても老朽化を完全に防ぐ事は出来ません。エレベーターの法定耐用年数は17年であり、その主要機器の平均耐用年数は20年程です。いずれは、部品の供給が停止され部品交換等が難しくなり事故のリスクが高くなります。安心・安全の為にもご検討頂くようお勧め致します。
商業ビルにおいて注意すべき事は、昇降設備の保守が不充分であったり、所有者の責めに帰すべき事由による停止や、急な故障時において部品の供給停止や在庫不足から、稼働まで数週間の時間が必要となってしまう等が発生した場合、テナントからのクレーム、営業補償を求められる事もあります。
既存不適格
現時点で存在している建築物は、建築された当時の法令に基づいて建築されています。そのため、建築基準法令が改正されると、新しい法規に適合しないことがあります。 その場合、現時点の建築物は、新たに定められた法令の規定が適用されないことが定められています。これがいわゆる「既存不適格」です。
平成22年4月以降、建築基準法第12条に基づく定期検査を行うエレベーターで、戸開走行保護装置などが設けられていないエレベーターについては、すべて「要是正(既存不適格)」 となります。
適切に維持管理するとともに、定期的な検査の結果を特定行政庁に報告することは、所有者・管理者の義務となっています。 なお、定期報告が未報告や虚偽の報告を行った場合は、罰則の対象(百万円以下の罰金)となります。
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