建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)について

はじめに

 「建築物衛生法」(正式名称:建築物における衛生的環境の確保に関する法律、通称:ビル管法)は、
多くの人が利用する建物内の環境を衛生的に保ち、利用者の健康を守るための法律です。
 実務で重要となるポイントを整理して解説します。

1.対象となる建物(特定建築物)

すべての建物が対象ではなく、以下の用途と規模に該当するものが「特定建築物」として法的な義務を負います。

主な用途:

 興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、店舗、事務所、旅館、学校。

規模(延べ面積):

  • 一般の特定用途(店舗・事務所等): 3,000㎡以上
  • 学校教育法第1条に規定する学校(小・中・高校等): 8,000㎡以上

注意: 2025年4月に施行される「建築基準法」や「建築物省エネ法」の改正と混同されやすいですが、建築物衛生法自体の「3,000㎡」という基準は
2025年現在も変更ありません。(1,000㎡規模については建築基準法の定期報告制度などで議論されることが多い項目です)

2.建築物環境衛生管理基準(5つの柱)

特定建築物の所有者等は、以下の基準を維持する義務があります。

項目主な基準内容
空気環境二酸化炭素(1,000ppm以下)、温度(18〜28℃)、湿度(40〜70%)、浮遊粉塵などを2ヶ月以内ごとに1回測定。
給水管理飲料水の水質検査、貯水槽(受水槽)の清掃を1年以内ごとに1回実施。残留塩素の測定を7日以内ごとに1回実施。
排水管理排水槽、汚水槽、雑排水槽の点検・清掃を6ヶ月以内ごとに1回実施。
清掃日常の清掃に加え、床面の洗浄やワックス掛けなどの定期清掃を実施し、廃棄物処理を適切に行う。
ねずみ・昆虫生息状況の調査を6ヶ月以内ごとに1回実施し、必要に応じて防除作業を行う。

3.「建築物環境衛生管理技術者」の選任

特定建築物には、国家資格を持つ「建築物環境衛生管理技術者(通称:ビル管理士)」を選任しなければなりません。

役割:

 衛生管理業務の監督、所有者への意見具申、帳簿の整備など。

緩和措置:

 かつては1棟1専任が原則でしたが、現在は一定の条件(近接している、兼務しても業務に支障がない等)を満たせば、1人の管理技術者が複数のビルを兼務することが可能になっています。

4.2025年の動向と注意点

現在、建物管理において特に注目されているのは以下の点です。

感染症対策:

 新型コロナ禍以降、社会的に注目され、運用面で重視される傾向にあります。
 レジオネラ症防止: 冷却塔や加湿器の清掃・消毒が改めて重視されています。

5.「空気環境測定」と「水質検査」の具体的な頻度と項目

空気環境測定の詳細:

 ビル内の空気が汚れていないか、エアコンが適切に作動しているかをチェックします。

測定頻度:

 2ヶ月以内ごとに1回、定期的に実施する必要があります。

測定項目と基準値

測定項目管理基準値備考
浮遊粉塵量0.15mg/m³ 以下空気中のチリやホコリの量
一酸化炭素 (CO)10ppm 以下燃焼器具などの不完全燃焼の確認
二酸化炭素 (CO2)1,000ppm 以下換気が十分かどうかの目安(最重要)
温度18度以上 28度以下居室の温度
相対湿度40%以上 70%以下乾燥しすぎ、多湿すぎを防ぐ
気流0.5m/秒 以下不快な風(ドラフト)がないか
ホルムアルデヒド0.1mg/m³ 以下建築・改修後、最初の夏期に1回測定

水質検査の詳細(飲料水):

 貯水槽(受水槽)を通した水が安全に飲める状態かを検査します。
 水質基準省令の項目群について、規則で定められた頻度(6か月ごと・毎年・3年ごと等)で検査します。

項目:

 残留塩素、色、濁り、味、臭い

基準:

 遊離残留塩素が 0.1ppm以上 保持されていること。

項目例:

  一般細菌、大腸菌、塩化物イオン、有機物(TOC)、pH値、味、臭い、色度、濁度など。

貯水槽清掃:

 受水槽・高架水槽の中を清掃し、消毒します。

その他の重要な管理項目(雑用水・排水)

飲み水以外にも、以下の管理が義務付けられています。

項目内容頻度
排水槽の清掃汚水槽・雑排水槽の点検・清掃6ヶ月以内ごとに1回
雑用水(トイレ等)散水やトイレ洗浄水に使う水の検査7日以内ごとに一回(遊離残留塩素等)
ねずみ・昆虫の防除生息状況の調査と、必要に応じた駆除6ヶ月以内ごとに1回

実務上の注意点(2025年現在)

記録の保管期間(重要):

 測定結果や清掃の報告書、水質検査成績書などは、(自治体の運用に従い)概ね5年程度の保存が求められることが多いです。保健所の立ち入り検査の際にチェックされます。

デジタル化の進展:

 最近では、CO2濃度をリアルタイムで測定し、クラウド上で記録・管理するシステムを導入するビルが増えています。手書きの台帳からデジタル管理へ移行する過渡期にあります。

レジオネラ対策:

 加湿器(特に超音波式)や冷却塔については、水質管理基準を厳格に守らないとレジオネラ症の原因となるため、清掃記録が重視されます。

6.「建築物衛生法(ビル管法)」における清掃

単に見た目を綺麗にするだけでなく、「衛生的環境を維持し、利用者の健康を守る」ことが法的な目的です。

特定建築物の所有者や管理者が守るべき「清掃管理」の具体的なルールを、実務に即して詳しく解説します。

清掃の基本原則(管理基準):

 法律では、以下の3つの観点から清掃を行うよう定められています。

日常清掃:

 毎日行うべき基本的な清掃。

定期清掃:

 床のワックス掛けやカーペット洗浄など、計画的に行う清掃。

廃棄物管理:

 出たゴミを不衛生にならないよう適切に処理すること。

具体的な清掃箇所と頻度の目安:

 ビル管法では「いつ、どこを」という具体的な回数まで細かく指定されているわけではありませんが、「衛生的環境を維持するために必要な頻度」で行うことが求められます。実務上の一般的な運用は以下の通りです。

清掃区分対象箇所内容・頻度
日常清掃事務室、廊下、トイレ、洗面所、エレベーター毎日1回以上。除塵(ホコリ取り)、水拭き、ゴミ回収。
定期清掃床(ハードフロア)、カーペット1〜6ヶ月に1回。床の洗浄・ワックス塗布、スチーム洗浄。
特別清掃窓ガラス(外側)、外壁、照明器具、ブラインド6ヶ月〜1年に1回。高所作業を含む大規模な清掃。
廃棄物処理ゴミ集積場(保管庫)毎日点検・回収。保管場所の消毒や防虫対策も含む。

廃棄物の保管と処理:

 清掃に伴う「ゴミの扱い」もビル管法の大事な項目です。

保管場所:

 ゴミ捨て場は、不浸透性材料(コンクリート等)で作られ、ネズミや昆虫が発生しない構造である必要があります。

清掃と消毒:

 ゴミ集積場自体も定期的に洗浄し、必要に応じて消毒を行う義務があります。

分別:

 適切に分別し、速やかに搬出できる体制を整えなければなりません。

「統一点検」と記録の保存:

 ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)の業務として、清掃状況のチェックが不可欠です。

点検:

 清掃が基準通り行われているか、目視や聞き取りで点検します。

帳簿の備え付け:

 いつ、誰が、どこを清掃したかの記録(清掃日報・月報)を整備します。

6年間の保存:

 清掃に関する記録は、他の測定結果と同様に6年間保存する義務があります。

清掃業者の選定(登録制度):

 ビル管法には、清掃業務を請け負う業者のための**「登録制度」**があります。

第1種(建築物清掃業):

 一般的な清掃。

第8種(建築物飲料水貯水槽清掃業):

 水槽(タンク)の清掃。

 特定建築物のオーナーが業務を外注する場合、この「登録業者」に依頼することが推奨されます。登録業者は、有資格者(清掃作業監督者など)を配置し、適切な資機材(真空掃除機やポリッシャーなど)を保有していることが証明されているためです。

2025年現在のトレンド:

 最近の清掃管理では、以下の要素が重視されています。

ロボット掃除機の導入:

 人手不足対策として、深夜の廊下清掃などを自動化するビルが増えています。

環境配慮型清掃:

 強い薬品を使わず、水や環境負荷の低い洗剤を使用する手法(グリーンクリーニング)。

感染症対策:

 以前よりも「ドアノブ」「スイッチ類」など、手が触れる場所(高頻度接触部位)の除菌作業がルーチン化しています。

7.湿度管理について

 建築物衛生法(ビル管理法)に基づき、衛生的な環境を維持するために適切な湿度管理が法律で定められています。

ビル管理における湿度管理の基準と方法:

 「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)」では、空気環境の調整に関する基準として、相対湿度を40%以上70%以下に維持するよう努めることが定められています。

主な管理方法は以下の通りです。

 空調設備による管理:

  ビルに備え付けられている空気調和設備(空調)には、通常、加湿・除湿機能が含まれています。これらの設備を適切に運転し、
  基準値を維持します。特に冬場は外気が乾燥しているため、加湿装置を適切に稼働させることが重要です。省エネ運転により除湿が
  不十分になるケースもあるため、意識的な調整が必要です。

 補助的な対策:

  空調設備だけでは基準維持が難しい場合、個別に加湿器や除湿機を設置して対応します。
  サーキュレーターや扇風機を使って室内の空気を循環させることも効果的です。
  窓の結露対策として、室内温度を下げるなどの方法もあります。

定期的な測定と記録:

  法律に基づき、2ヶ月以内ごとに1回、定期的に温度、湿度などの空気環境測定を実施し、記録する必要があります。
  測定機器は定期的に校正・メンテナンスされたものを使用します。

利用者との連携:
   テナントや利用者が独自の判断で空調機器の操作(加湿の停止など)を行うと、ビル全体の湿度管理に影響が出ることがあります。
  ビル管理者は、適切な機器の操作方法について周知徹底する必要があります。

8.ねずみ、昆虫等の防除について

建築物衛生法(ビル管理法)に基づく「ねずみ、昆虫等の防除」は、特定建築物の維持管理基準において以下のように定められています。

基本方針:IPM(総合的有害生物管理)

 現在の基準では、単に定期的に薬剤を撒くのではなく、IPM(Integrated Pest Management)の考え方に基づいた防除が求められています。
 これは、生息調査の結果に基づいて必要な分だけ対策を講じ、人や環境への影響を最小限に抑える手法です。

 主な維持管理基準:

  生息調査の頻度:6か月以内ごとに1回、定期的かつ統一的に調査を実施しなければなりません。

 発生時の措置:

  調査の結果、ねずみや昆虫などの発生が確認された場合は、ただちに発生防止のための措置(駆除や清掃、侵入経路の遮断など)を
  講じる必要があります。

 薬剤の使用:

  殺鼠剤や殺虫剤を使用する場合は、薬機法(旧薬事法)の承認を受けた医薬品または医薬部外品を使用し、事故防止に努める必要があります。

 具体的な対策内容

  侵入防止

   防鼠・防虫網などの設備の点検・補修、パイプの隙間の封鎖などを行い、物理的に侵入を防ぎます。

  環境整備

   餌となる生ゴミの適切な管理や、整理整頓・清掃を徹底し、ねずみや昆虫が繁殖しにくい環境を作ります。

  作業の実施と委託:

   防除作業は原則として自ら実施するか、適切な技術を持つ業者(建築物ねずみ昆虫等防除業の登録業者など)に委託します。

  記録の保存:

   防除に関する調査結果や実施した措置の記録は、5年間保存することが義務付けられています。
   詳細は、厚生労働省の建築物環境衛生管理基準ページにて確認できます。

弊社では事業用不動産に特化し、ビルの管理運営業務を行っています。
賃貸管理・建物管理につきましてのご相談等ございましたら、お気軽にご相談くださいませ。

ビルマネジメント概算お見積もり

選択するだけですぐお見積もりできます

各項目を選択するだけで、おおよその見積金額を自動算出いたします。

首都圏・近畿圏を中心にエリア拡大中!
対応可能エリアはこちら

  

ビル管理に関する無料ご相談

ビルオーナー様のお悩みをお聞かせください

お電話・リモートでも対応可能です。まずはお問い合わせください

 

By | 2026年2月27日

関連記事