はじめに
自家用電気工作物の保安管理では、まず「誰が設置者に当たるのか」を整理する必要があります。もっとも、建物や施設の運営では、所有者と、実際に設備の維持管理を担う事業者が一致しないこともあります。こうした場面を前提に、主任技術者制度の運用の中で設けられているのが「みなし設置者」という取扱いです。
設置者の考え方
電気事業法は、自家用電気工作物を第三十八条で定義し、あわせて、事業用電気工作物を設置する者に対して、技術基準に適合するよう維持すること、保安規程を定めて届け出ること、主任技術者を選任することを求めています。自家用電気工作物の保安管理は、この「設置する者」を中心に組み立てられています。 ここでいう設置者は、単に所有権を持つ者という意味ではありません。自家用電気工作物の維持・管理を行い得る主体であり、所有者のほか、設備全体を借り受けて修理まで行う占有者が設置者となる場合もあります。
みなし設置者の位置付け
みなし設置者とは、設置者から自家用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督に係る業務の委託を受けている者のうち、選任する事業場等に常時勤務し、当該設備の維持・管理の主体であって、電気事業法第三十九条第一項の義務を果たすことが明らかな者について、設置者とみなす取扱いです。この場合、受託者は、みなし設置者として主任技術者の選任を行うことができます。 この制度は、所有者と運営主体が分かれている施設で、実際に保安管理を担っている側が、主任技術者制度に関する手続きを行えるようにするためのものです。ただし、みなし設置者は本来の設置者そのものになるわけではなく、一定の範囲で設置者とみなされる取扱いにとどまります。
みなし設置者となるための前提
みなし設置者となるには、受託者が設備の維持・管理の主体であり、技術基準に適合するよう維持するために必要な措置をとることができる立場にあることが必要です。単に点検や運転の一部を受け持っているだけでは足りず、必要な判断と措置を行う権限まで契約上確保されていなければなりません。 また、契約には、設置者が電気主任技術者の意見を尊重すること、工事・維持・運用に従事する者がその指示に従うこと、選任された電気主任技術者が保安監督の職務を行うことなどの条項が含まれている必要があります。みなし設置者に当たるかどうかは、委託の実態だけでなく、契約内容まで含めて判断されます。
みなし設置者が行うことができる手続
みなし設置者が行うことができる手続は、設置者に関するすべての手続ではありません。主に主任技術者の選任と、保安規程に係る届出・申請です。言い換えると、みなし設置者は保安管理の実態に即して一定の手続を担いますが、それ以外の手続まで全面的に引き受けるわけではありません。
導入時の手続も、この考え方に沿って整理されています。新設時からみなし設置者で運用する場合は、保安規程届出、主任技術者選任又は解任届出、必要に応じた保安管理業務外部委託承認申請に加え、「みなし設置者」の確認書が必要です。途中からみなし設置者による運用へ切り替える場合は、保安規程変更届出と確認書が必要になります。 補足ですが、みなし設置者は設備の維持・管理の主体であることが前提になるため、その立場をさらに別の者に委託することはできません。
まとめ
自家用電気工作物のみなし設置者とは、設置者から保安の監督に係る業務の委託を受けている者のうち、その設備の維持・管理を実質的に担い、技術基準に適合するよう維持する責任を果たせる立場にある者について、主任技術者の選任や保安規程に係る手続の範囲で設置者とみなす制度です。所有者と運営主体が分かれている施設では、実際の管理体制に合わせて保安管理を組み立てるための考え方として重要です。
一方で、みなし設置者は本来の設置者に置き換わるものではなく、できる手続の範囲も限られています。自家用電気工作物の保安管理では、所有者、設置者、みなし設置者の関係を整理したうえで、保安規程や契約の中で役割分担を明確にしておくことが要点になります。
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