用途変更とは、ある建物の新築のときの使いみちを、別の使いみちに変えるための手続きのことを言います。
例えば、新築時「物販店舗」として申請・使用していた建物(区画)を、新たに「飲食店舗」として使用するには、用途変更という手続きが必要となります。
どんな時に必要か?
参考例1)
- もともと「事務所」だった建物(区画)を→「物販店」へ変更する
- もともと「物販店」だった建物(区画)を→「飲食店」へ変更する
- もともと「物販店」だった建物(区画)を→「デイサービス」へ変更する
- もともと「物販店」だった建物(区画)を→「保育所」へ変更する etc…
上記のように、大きく分けて以下の2つに当てはまる際に用途変更が必要になります。
- 既存の用途を特殊建築物に変更する
- 用途を変更する面積が200㎡を超える
※2019年6月25日より100㎡から改正されました
参考例2)
- 事務所ビルの1階に250㎡の飲食店を開業するとき→用途変更の確認申請が必要
- 逆に、250㎡の飲食店部分を事務所に変更するとき→用途変更の確認申請は不要
このように、建物の全体または一部の用途を変更するときは、どのような用途に変更するのか、また、どの程度の広さで用途を変更するのかによって、確認申請が必要かどうか判断されます。
何で用途変更をしなければならないの?
用途変更をしなければならない理由は、建物の使いみちによって、その建物を安全に使うための基準がそれぞれ異なるからです。
例えば、建物を「事務所」として使う時と、「物販店舗」として使う時では、避難の考え方や求められる環境的な性能(採光・換気など)が違い、その用途に合わせた安全対策や環境対策が必要になってきます。
以下、建築基準法の引用
1.建築確認申請の手続き(法第6条第1項、法第87条第1項)
原則)
下表に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものに用途変更をする場合は、確認申請書を提出して、確認済証の交付を受けなければならない。
【表1:確認申請が必要となる用途(法別表第1、令第115条の3)】=特殊建築物のこと。
(一)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもの
(二)病院、診療所(※)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等
(三)学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場
(四)百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗
(五)倉庫
(六)自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオ
※:患者の収容施設があるものに限る。以下同じ。
例外1)
次の各号の類似用途間への変更の場合は、確認申請は不要である。(令第137条の17)
(一)劇場、映画館、演芸場
(二)公会堂、集会場
(三)診療所(※) 、児童福祉施設等
(四)ホテル、旅館
(五)下宿、寄宿舎
(六)博物館、美術館、図書館
(七)体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
(八)百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗
(九)キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
(十)待合、料理店
(十一)映画スタジオ、テレビスタジオ
参考例1)美術館を → 図書館へ変更 = 確認申請不要
参考例2)体育館を → ゴルフ練習場へ変更 = 確認申請不要
☆一種低層住専地域内に三、六号に列記するもの、一・二種中高層住専地域内に七号に列記するものがある場合は、上記例外はない。
2.用途変更のながれ
①建築確認申請の要・不要
②既存不適格建築物の用途変更の準用のチェック
(1)用途の変更によって、現行法令に適合しない規定をチェックする。
(2)現行法令に適合しない規定は、既存不適格となる規定か。
(着工時点では適合していたか)
(3)既存不適格となる規定が法第87条に掲げる規定であり、下記例外2に該当しない場合は、用途変更によって、用途変更の部分以外も含めて既存部分すべて(部分適用の規定は当該部分のみ)適用される。
例外2)
次の各号の類似用途間への変更の場合は、上記規定は準用されません。(令137条の18)
(一)劇場、映画館、演芸場、公会堂、集会場
(二)病院、診療所(※) 、児童福祉施設等
(三)ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎
(四)博物館、美術館、図書館
(五)百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗
(六)キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
(七)待合、料理店
(八) 映画スタジオ、テレビスタジオ
(4)既存不適格となる規定が法第87条に掲げる規定でない場合は、着工時点の規定が適用される。
既存不適格とは?
建築時には適法に建てられた建築物であって、その後、法令の改正や都市計画変更等によって現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のことを言います。
建築基準法は原則として、着工時の法律に適合することを要求しているため、着工後に法令の改正など、新たな規制ができた際に生じるものになります。そのまま使用していても直ちに違法というわけではありませんが、増築や建替え、用途変更等を行う際には、法令に適合するよう一定範囲の是正義務が生じます。
手続きに掛かる費用は?
数十万円~数百万円と、用途変更内容・依頼先によって金額は様々です。
詳しくは、関係官庁や専門家へお問い合わせください。
手続きに必要なものは?
- 用途変更するときは「検査済証」が必要
- 検査済証が無い場合は「建築確認書」が必要
- その他、設計図書等、詳しくは専門家である建築士へお問い合わせください。
「検査済証」とは、その建物と敷地が建築基準関連規定に適合していることを証明するものです。「検査済証」は、建物の完成時に交付されます。
ただし、中にはさまざまな理由から「検査済証」が存在しない物件もありますから、その際は、用途変更前に建物の調査を依頼する必要が出てきます。
「検査済証」が存在しない場合は、平成26年7月に国土交通省で定められたガイドラインに基づき、一級建築士あるいは建築基準適合判定資格者に「建築確認書」に基づいた調査を依頼することで、検査済証と同等の位置づけとなる報告書を発行できることになりました。
「建築確認書」は、建築しようとする建造物が建築基準に適合しているかどうかの審査を受け、その際に適合していたことを証明するものです。したがって、建築確認書は建築着工前に交付されます。
一級建築士または建築基準適合判定資格者が、建物の状態が建築確認書の通りであるかを確認します。仮に「建築確認書」がない場合は、新たに復元図書を作成します。
また、単に「検査済証」や「建築確認書」を紛失したケースでは、「台帳記載事項証明」という書類で代用することが可能です。
手続きに掛かる期間は?
一概に期間を回答することは難しいのが現状です。
- 既存建物の図面・書類等が揃っているか
- 建物の現状はどうなっているか、法律に適合しているか
- 確認申請機関はどのような書類・図面を要求するか
- どの程度の改修が必要になるか
などによって、掛かる手間や時間が大幅に違ってくるためです。この他にも、建築基準法や消防法、その他法令が複雑に絡みます。手続きの必要の有無や安全性を確かめるためにも、前もって、関係官庁や専門家へ確認しましょう。
こんな罰則も…
昨今では、用途変更なしで商売をしているテナントも少なくありません。
しかし、建築基準法では、用途変更の必要があるにもかかわらず確認申請をしなかった場合、建築所有者に対し、最大で懲役3年以下または300万以下の罰金(建物所有者が法人の場合は1億円以下の罰金)が科せられる定めがあります。
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